同窓会組織による奨学金は、関係者の信頼関係で成り立つことが多く、柔軟な運用が可能です。
しかし、公益法人として奨学金事業を行う場合は、「不特定かつ多数の者に開かれた受益機会」と「公平な選考体制」が必須条件となります。
寄附金控除など税制優遇の対象となる以上、選考過程や基準が社会的に説明できる形で整備されている必要があるのです。
(1)対象校の入学機会が開かれていること
誰でも受験できる学校であることが原則です。宗教や会員制など外部からの入学が制限されている場合、認定は難しくなります。
(2)受益の機会の公開
募集要項・応募条件・選考方法をホームページや学校掲示板で公表し、誰でも条件を知って応募できるようにします。
(3)公平な選考体制の確立
理事会や外部有識者を含む選考委員会を設置し、利害関係者を排除します。審査基準や手続きを明文化し、議事録を残します。
(4)特別利益の禁止
理事や寄附者の親族だけを優遇するなど、特定の関係者だけが利益を受ける規定は不可です。
公益化にあたっては、「奨学金基金規程」などの名称で、対象者の条件、募集方法、選考委員会の構成、給付額・期間、返還条件などを明記した規程を作成します。
この規程は理事会で承認し、法人の公式サイト等で公開することが望まれます。
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奨学金基金規程(例) 第1条(目的) この規程は、公益財団法人〇〇(以下「当財団」という。)が、母校〇〇〇〇に在学中で経済的理由により就学が困難な学生を支援するための奨学金給付事業(以下「本事業」という。)について、その運営方法を定め、学校の教育水準向上および社会に有用な人材の育成に寄与することを目的とする。 第2条(対象校) 対象校は、●●中学校とする。 第3条(対象者) 奨学金の対象者は、対象校に在学する者で、次の各号のすべてに該当する者とする。
第4条(募集の公開)
第5条(給付額及び期間)
第6条(申請手続) 奨学金を希望する者は、当財団所定の申請書に必要書類を添えて、募集期間内に提出しなければならない。 第7条(選考)
第8条(給付の決定と公表)
第9条(特別利益の禁止) 法人関係者(理事、監事、評議員、寄附者およびその親族)を優遇する取扱いは行わない。 第10条(受給者の義務)
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注目していただきたい規定は第3条3項(学業成績が優秀であること。)です。多くの奨学金規定にこのような規定があります。
私が設立をし、運営をする奨学金基金にも当初このような規定がありました。しかし、現在、削除をしています。
というのも、就学困難に至った事情は違えども、奨学金を求める学生は申請時点で就学困難にあり、「安心して学ぶ環境」の外側にいます。
そもそも、学ぶ機会すら十分に与えられてこなかった子もます。
そのような学生に「学業成績が優秀」であることを求めるのは要件に審査を行うことは、支援の門戸を不必要に狭め、「努力できる環境にいる人」だけを救う制度になってしまう危険があるからです。
成績が振るわない背景には、家庭の経済状況だけでなく、家族の介護やアルバイト漬けの日々、心の問題、居場所の欠如など、本人の責ではない事情が横たわっていることが少なくありません。
むしろ、支援の必要性が高いのは、「成績に表れない努力を続けている子」であり、「環境さえ整えば伸びる可能性を秘めた子」です。
奨学金は、結果や成果の“ご褒美”ではなく、学ぶ機会と未来への希望を開くための“スタートライン”を整える支援であるべきだと考えています。
この理念に立ち返り、私たちの基金では、選考基準を「学びたい意欲」「将来への思い」「環境が整えば伸びる可能性」に重点を置く方針へ転換しました。点数ではなく、言葉と想いに耳を傾ける仕組みです。
確かに、予算の制約がありますが、学ぶ意欲があり支援が必要な学生であれば支援をすべきであり、支援の結果として「学業成績が優秀」の方向に向かえばよいと思います。

同窓会による支援は、歴史と母校への想いが強みです。しかし一方で、財源の不安定さやガバナンス・透明性の不足、組織基盤の脆弱性など、制度的な弱点も存在します。
ルール整備を行い公益法人化することは、寄付者や社会からの信頼を高めることにつながるでしょう。これにより、さらに多くの学生を支援できる体制を構築することが可能になるのではないでしょうか。