(1)所得税法・法人税法上の取扱い
- 学校教育法に定める学校法人は、文部科学大臣等から「特定公益増進法人」に指定されるため、個人の寄附については 所得税の寄附金控除(所得控除または税額控除)が可能です。
- 法人が寄附する場合も、損金算入限度額が拡大されます(一般寄附金より有利)。
(2)実務上の条件
- 所得税の寄付金控除や損金算入限度額の拡大を受けるには、学校法人に受入証明書(寄附金受領証明書)を発行してもらう必要があります。
- また、寄附が特定の学生や特定のクラスなど「寄附者が指定する受益者」に直接充てられる場合は、純然たる寄附金と認められない場合があります。
| メリット |
デメリット |
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既存の学校法人を使うため、別法人設立や公益認定の手間が不要 |
奨学金制度や免除基準の決定権は学校法人にあり、卒業生側が細かく関与できない |
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学校法人はすでに寄附金控除対象法人なので、税制優遇をすぐ利用できる |
学校法人の会計に一旦入るため、寄附金の使途や残高の透明性は学校の運用に依存 |
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学校内での広報や受給者選考がスムーズ |
寄附の使い方が「卒業生の意向通り」になる保証はない |
まとめると以下のようになります。
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項目 |
公益法人方式 |
学校法人寄附方式 |
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設立手続 |
新法人設立+公益認定申請が必要 |
なし(寄附契約のみ) |
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寄附金控除 |
認定後は可能(公益認定法人・特定公益増進法人扱い) |
可能(学校法人は既に対象) |
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奨学金基準の設定 |
自法人で自由に設計可能(ガイドライン遵守) |
学校法人の規程・判断に従う |
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透明性 |
公益法人会計・情報公開制度で担保 |
学校法人会計基準・情報公開制度に依存 |
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卒業生側の関与 |
理事・評議員として制度運営に直接関与 |
寄附金の使途指定は限定的(制限あ |
- 寄附金控除の即効性を重視 → 学校法人寄附方式が簡単で早い。
- 卒業生主体で制度設計・運営したい → 公益法人方式が適する。
結論として、
「寄附金控除が目的で、学校側の制度運営に委ねても構わない」なら学校法人寄附方式、「卒業生側で選考基準や対象範囲を決めたい」なら公益法人方式が適しています。
奨学金制度の制定を学校法人に委ねない理由の一つに「学校法人に寄附しても、その使い道や意思決定の透明性・公平性が十分に担保されていない」との意見がありました。その背景には以下のようなものがあります。
- 寄附金の使途が寄附者の意図と異なる場合がある
→ 奨学金目的で寄附した金銭が、施設整備や運営費補填に使われることもある - 意思決定が限られた内部者で行われる
→ 理事や評議員が固定化し、外部監視や意見反映が弱い - 情報開示が少ない
→ 寄附金の収支・残高、奨学金給付者数などが寄附者や社会に明確に説明されない - 選考基準や運営ルールが不透明
→ 奨学金受給者の決定プロセスが明文化されず、結果が恣意的に見えることもある
過去には、新聞等で学校法人のコンプライアンス違反やガバナンス不全に関する事件が取り上げられたことがあります。学校法人寄付方式には、そういったリスクがあることを念頭に置く必要があるでしょう。
とはいえ、母校の学生のための奨学金基金の運営に、学校法人との連携は不可欠です。募集・選考・給付のいずれの段階においても、学校側の協力や情報提供がなければ実効性が担保できません。
公益法人方式を選べば、手間はかかりますが、組織としての透明性や外部監視の仕組みを活かしつつ、学校法人と役割分担を明確にして互いの強みを補完し合うことができます。結果的に、寄附者や社会からの信頼を高めることにもつながるでしょう。
過去の事例を教訓として、ガバナンスを強化し、健全な協力関係を築き続けることこそが、母校の後輩たちの未来を支える最良の道と言えるのではないでしょうか。