コラム
2025/12/17 2025/12/24

母校奨学金基金をつくるには?(その2)

1 なぜルールが必要か

同窓会組織による奨学金は、関係者の信頼関係で成り立つことが多く、柔軟な運用が可能です。

しかし、公益法人として奨学金事業を行う場合は、「不特定かつ多数の者に開かれた受益機会」と「公平な選考体制」が必須条件となります。

寄附金控除など税制優遇の対象となる以上、選考過程や基準が社会的に説明できる形で整備されている必要があるのです。

2.公益法人に求められる主なルール

(1)対象校の入学機会が開かれていること

誰でも受験できる学校であることが原則です。宗教や会員制など外部からの入学が制限されている場合、認定は難しくなります。

(2)受益の機会の公開

募集要項・応募条件・選考方法をホームページや学校掲示板で公表し、誰でも条件を知って応募できるようにします。

(3)公平な選考体制の確立

理事会や外部有識者を含む選考委員会を設置し、利害関係者を排除します。審査基準や手続きを明文化し、議事録を残します。

 

(4)特別利益の禁止

理事や寄附者の親族だけを優遇するなど、特定の関係者だけが利益を受ける規定は不可です。

3.規程整備のすすめ

公益化にあたっては、「奨学金基金規程」などの名称で、対象者の条件、募集方法、選考委員会の構成、給付額・期間、返還条件などを明記した規程を作成します。

この規程は理事会で承認し、法人の公式サイト等で公開することが望まれます。

奨学金基金規程(例)

1条(目的)

この規程は、公益財団法人〇〇(以下「当財団」という。)が、母校〇〇〇〇に在学中で経済的理由により就学が困難な学生を支援するための奨学金給付事業(以下「本事業」という。)について、その運営方法を定め、学校の教育水準向上および社会に有用な人材の育成に寄与することを目的とする。

2条(対象校)

対象校は、●●中学校とする。

3条(対象者)

奨学金の対象者は、対象校に在学する者で、次の各号のすべてに該当する者とする。

  1. 学資の支弁が困難であること。
  2. 人物が優れていると認められること。
  3. 学業成績が優秀であること。

4条(募集の公開)

  1. 奨学金の募集は、当財団のホームページおよび対象校の掲示板等で広く公表する。
  2. 募集要項には、応募資格、給付額、給付期間、募集期間、応募方法、選考方法および結果通知方法を明記する。

5条(給付額及び期間)

  1. 奨学金の給付額および給付期間は、理事会の議決により定める。
  2. 同一人への給付は、原則として連続〇年間以内とする。

6条(申請手続)

奨学金を希望する者は、当財団所定の申請書に必要書類を添えて、募集期間内に提出しなければならない。

7条(選考)

  1. 奨学金受給者の選考は、理事会が任命する選考委員会が行う。
  2. 選考委員会は外部有識者を含む構成とし、利害関係者を排除して公平・中立に審査する。
  3. 選考結果は議事録に記録し、理事会の承認を経る。

8条(給付の決定と公表)

  1. 奨学金の給付は、理事会の承認を経て決定する。
  2. 受給者氏名等、必要な範囲の情報はホームページ等で公表する。

9条(特別利益の禁止)

法人関係者(理事、監事、評議員、寄附者およびその親族)を優遇する取扱いは行わない。

10条(受給者の義務)

  1. 受給者は、学業に精励し、当財団が求めた場合は成績証明書や活動報告書を提出する。
  2. 受給者が次の各号のいずれかに該当するときは、奨学金の給付を停止または返還を求めることがある。
    (1)
    申請内容に虚偽があったとき。
    (2)
    学業成績や品行が著しく不良であるとき。
    (3)
    その他理事会が給付継続を不適当と認めたとき。

 

注目していただきたい規定は第3条3項(学業成績が優秀であること。)です。多くの奨学金規定にこのような規定があります。

私が設立をし、運営をする奨学金基金にも当初このような規定がありました。しかし、現在、削除をしています。

というのも、就学困難に至った事情は違えども、奨学金を求める学生は申請時点で就学困難にあり、「安心して学ぶ環境」の外側にいます。

そもそも、学ぶ機会すら十分に与えられてこなかった子もます。

そのような学生に「学業成績が優秀」であることを求めるのは要件に審査を行うことは、支援の門戸を不必要に狭め、「努力できる環境にいる人」だけを救う制度になってしまう危険があるからです。

成績が振るわない背景には、家庭の経済状況だけでなく、家族の介護やアルバイト漬けの日々、心の問題、居場所の欠如など、本人の責ではない事情が横たわっていることが少なくありません。

むしろ、支援の必要性が高いのは、「成績に表れない努力を続けている子」であり、「環境さえ整えば伸びる可能性を秘めた子」です。

奨学金は、結果や成果のご褒美ではなく、学ぶ機会と未来への希望を開くためのスタートラインを整える支援であるべきだと考えています。

この理念に立ち返り、私たちの基金では、選考基準を「学びたい意欲」「将来への思い」「環境が整えば伸びる可能性」に重点を置く方針へ転換しました。点数ではなく、言葉と想いに耳を傾ける仕組みです。

確かに、予算の制約がありますが、学ぶ意欲があり支援が必要な学生であれば支援をすべきであり、支援の結果として「学業成績が優秀」の方向に向かえばよいと思います。

 

4.まとめ

同窓会による支援は、歴史と母校への想いが強みです。しかし一方で、財源の不安定さやガバナンス・透明性の不足、組織基盤の脆弱性など、制度的な弱点も存在します。

ルール整備を行い公益法人化することは、寄付者や社会からの信頼を高めることにつながるでしょう。これにより、さらに多くの学生を支援できる体制を構築することが可能になるのではないでしょうか。

 

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