よくあるご質問

設立に関するQ&A

Q1: どのような事業が「公益目的事業」として認められますか

A1: 「公益目的事業」とは、「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与することを目的とする事業」を指します。
具体的には、学術研究、教育、福祉、医療、環境保全、文化芸術の振興などが該当します。同窓会や同好会のように、特定の個人の親睦や利益を主目的とする事業は、公益目的事業とは認められません。

Q2: 公益法人を設立するために必要な最低財産額はありますか

A2: 一般社団法人から公益社団法人へ移行する場合、財産拠出の要件はありません。
ただし、一般財団法人から公益財団法人へ移行する場合は、設立時に300万円以上の財産拠出が必要です。公益法人の認定を受けるためには、公益目的事業を継続的に実施できる経理的基礎があることが求められます。

Q3:公益財団法人を設立するには何人必要ですか

A3:公益財団法人を設立するには、最低でも以下の要件を満たす必要があります。
まず、理事は3名以上、監事は1名以上、評議員は3名以上をそろえます。これらの役員は設立時に行う「設立総会」(評議員会)で選任し、定款を作成のうえ、議事録を作成しておくことが必要です。
また、設立登記では法務局へ必要書類を提出し、同時に所轄庁(都道府県または内閣府)へ公益認定の申請や届出を行います。したがって、実際に手続きを始める段階では、最低でも理事3名+監事1名+評議員3名、合計7名以上が実務を進められる人数と言えます。
ただし、評議員は設立後に一定期間(通常1年)以内の追加選任が可能な場合もあるため、余裕を持ってメンバーを確保しておくと安心です。

Q4: 公益法人の役員には、親族関係者の制限がありますか

A4: はい、制限があります。理事・監事の合計数のうち、親族等の合計数が3分の1を超えてはいけません。
これは、特定の個人や団体による支配を防ぎ、公益性を確保するための規定です

Q5: 公益認定の申請手続きは、どこにすればよいですか

A5: 公益認定の申請は、主たる事務所の所在地を管轄する都道府県に提出するのが一般的です。
ただし、複数の都道府県に事務所がある場合や、全国規模の事業を展開する場合は、内閣府の公益認定等委員会に申請することになります

Q6: 理事や監事、評議員などの役員報酬はどのように定めるべきですか

A6: 役員報酬は、公益法人としての公益性・非営利性を損なわないよう、不当に高額でない基準を定める必要があります。
具体的には、民間事業者の役員報酬水準や法人の規模、事業内容などを考慮して、適正な水準で定款等に定めることが求められます。また、親族関係者への過度な報酬支払いも避けるべきでしょう。

定款に報酬額または報酬規程の定めがあれば、総会(評議員会)で決議のうえ金銭的な報酬(給与)を受け取れます。具体的には、

  1. 定款の規定
    定款に「理事に報酬を支払う」と明記するか、報酬の算定基準を定款または別規程で定めます。
  2. 総会決議
    定款に報酬の根拠がある場合でも、報酬額・支給方法は総会(評議員会)または社員総会で可決が必要です。
  3. 公益法人の場合
    公益財団法人・一般財団法人では、所轄庁の認定を受けた報酬規程が求められることもあります。

したがって、理事に給与を支払うには「定款の定め」+「総会決議」が前提となり、所轄庁への届出・認定が要件となる場合もある点に注意してください。

運営に関するQ&A

Q7: 公益法人は儲けてはいけない(赤字でなければならない)のですが?また、必要以上に財産を持ってはいけないのですか?

A7:従来は毎年度ごとの収支均衡が求められていたものの、新制度では5年程度の中期で黒字と赤字を通算して均衡を図る方式に変更されました。
これにより、一時的な赤字が認められ、公益目的事業への再投資や将来事業に向けた準備も容易になりました。

また、公益法人は、その収益や財産を構成員の利益や内部留保のために蓄積するのではなく、公益目的事業の実施に充てることが使命です。したがって「必要以上に財産を溜め込む」ことは本来の趣旨に反します。これを遊休財産規制といいます。

Q8: 公益法人が収益事業を行う場合、どのような制限がありますか

A8: 公益法人は、公益目的事業に支障のない範囲で収益事業を行うことができます。
ただし、収益事業から得た利益は、原則として公益目的事業のために使用しなければなりません。また、公益目的事業の費用が、全事業の費用総額の50%以上であること(公益目的事業比率50%以上)も求められます。

Q9:公益法人の収益事業とはどんなものですか?

A9:公益法人の収益事業とは、営利を目的として継続的に行う事業のことで、たとえば施設の有料貸付、出版物やグッズの販売、有料講座の開催などが該当します。
公益法人が収益事業を行うには、

  • 定款への記載:収益事業の種類・範囲を定款で定める
  • 所轄庁への届出・認定:所轄庁(都道府県・内閣府)に収益事業実施の届出または認定申請
  • 会計の分離管理:公益目的事業と収益事業で帳簿を分け、収益は公益目的に充当
  • 税務申告:収益事業分は法人税の申告・納税が必要

これら要件をクリアすれば、公益法人でも収益事業を行うことが可能です。

Q10:公益目的事業と収益事業はどう違いますか?

A10: 公益目的事業:法人の主たる「社会的使命」を果たすための活動です。例として、福祉サービス・教育・文化振興などがあります。収益をあげても、すべて公益目的に使う必要があります。

収益事業:継続的に営利を目的として行う活動で、法人税の対象となります。例として、施設の有料貸付・物販・有料講座などがあります。

主な相違点
  1. 目的:公益目的事業は社会貢献、収益事業は利益獲得
  2. 会計管理:帳簿は分離管理し、収益事業の利益は法人税申告
  3. 届出・認定:収益事業は定款記載+所轄庁届出/認定が必要
  4. 利益の使途:公益目的事業の余剰はすべて公益活動に充当

Q11: 行政庁による監督は、具体的にどのようなことがありますか?

A11: 行政庁(内閣総理大臣または都道府県知事)は、公益認定後、定期的に公益法人の活動状況を監督します。
具体的には、事業報告書や計算書類の提出を求めたり、必要に応じて立入検査を行ったりします。公益認定後おおむね3年以内に1回目の立入検査が行われることが一般的です。

Q12: 定款とは何ですか? 何を記載すべきですか?

A12: 定款は法人の最も基本的な「ルールブック」で、法人の組織・運営に関する重要事項を定めています。最低でも以下の事項を記載します。

  1. 名称・目的:法人名と行う事業の内容
  2. 本店所在地・公告方法:主たる事務所の住所と公告手段
  3. 事業年度:会計期間の開始・終了日
  4. 社員(評議員)・機関構成:社員総会や評議員会の有無・権限
  5. 役員の員数・選任・解任方法:理事・監事(会計監査人)の人数と手続き
  6. 議事運営・議決要件:総会・理事会の招集方法と決議要件
  7. 剰余金の処分方法・解散事由:利益の配分・解散時の残余財産帰属先

これらの基本事項に加え、必要に応じて役員報酬規程や利益相反防止規定などを定めると、ガバナンスがより強固になります。

定款を作成することで、法人の活動範囲や意思決定の手続きが明確となり、内部統制やガバナンスの基盤を築くことができます。定款の内容は設立時に総会(評議員会)で承認したうえで公証人役場で認証を受け、設立登記時に法務局へ提出します。
変更する際も、変更議案の可決→登記申請という手続きが必要です。定款は法人運営の根幹をなすため、設立後も随時見直し・改定を行うことが推奨されます。

Q13: 定款で認めた事業以外はできないのですか?

A13: はい。法人は「定款に記載した事業のみ」を行うことが原則です。定款にない事業を行うと、「定款違反」となり、代表訴訟や行政処分のリスクがあります。
ただし、定款で広く包括的に事業目的を定めていれば、新たな事業でもその枠内で行える場合があります。新規事業を追加したいときは、総会で定款変更の議案を可決し、法務局への変更登記(+公益法人は所轄庁届出)を必ず行いましょう。

Q14: 定款を変更したいときは?

A14: 定款変更には以下の手順が必要です。

  1. 変更案作成:変更したい条文を明確化し、変更案を作成。
  2. 総会で可決:社員総会(一般法人)または評議員会(公益法人)で「定款変更議案」を提出し、定款で定める特別決議要件(通常は出席者の3分の2以上の賛成)を満たして可決。
  3. 公証人役場で認証:一般社団・財団法人の場合、公証人役場で定款変更の認証を受ける(公益法人は不要)。
  4. 登記申請:変更後2週間以内に法務局へ「変更登記」を申請し、定款変更を完了。
  5. 所轄庁届出(公益法人):公益法人はさらに所轄庁へ変更届出・認定申請が必要です。

これらを経て、正式に定款が変更されます。

Q15: 定款に書いていないことはどのように決めますか?

A15:定款に規定のない事項は、原則として理事会(または社員総会・評議員会)の「決議」で決めます。
具体的には:

  1. 内部規程の制定:理事会で就業規則や細則を定め、運用ルールを明文化。
  2. 総会・評議員会決議:重要事項は総会や評議員会で議案を提出し、過半数の賛成で可決。
  3. 法令準拠:会社法や一般社団法人法などの法令に定めがある場合は、これに従って手続き。

このように、法人運営の実務は「定款+内部規程+決議」の組み合わせで補完していきます。

Q16: 総会(評議員会)はどれくらいのペースで開きますか?

A16:定款で「年1回以上」、通常は事業年度終了後3か月以内に開催すると定めます。多くの法人では、年度決算の承認や事業報告を行うために毎年1回開催が必須です。
必要に応じて、臨時の議案を審議するために臨時総会(評議員会)を随時招集できます。開催頻度は定款で自由に上乗せ可能で、例えば四半期ごとのフォローアップを定めることもあります。

Q17:総会に参加する人は何人必要ですか?

A17:総会(社員総会・評議員会)の成立要件(定足数)は、法人ごとに定款で定めますが、一般的には「社員(評議員)総数の過半数以上」の出席を要件とするケースが多いです。

  • 社員総会(一般社団法人):社員総数の過半数以上が出席。
  • 評議員会(公益法人・一般財団法人):評議員総数の過半数以上が出席。

定款でこれより厳しく(例えば3分の2)定めることも可能ですが、法定最低要件としては特に定めがないため、多くの法人で「過半数」が採用されています。定款に定足数を記載し、招集通知にも明記しておきましょう。

Q18:総会の招集はいつまでに案内が必要ですか?

A18:総会の招集通知は、法令上の「最低期間」は定められていません。必ず定款で期間を定め、通常は
「開催日の2週間前まで」に書面または電磁的方法(メールやウェブ)で通知します。通知には日時・場所・議題を明記し、出席者が審議内容を事前に把握できるようにします。定款で「1か月前」など長めに設定しておけば、より確実な運営が可能です。

Q19: 社員総会の議案を事前に社員に周知したい

A19:招集通知と併せて「議案書」を送付すれば簡単に周知できます。
具体的には:

  • 送付時期:定款で定めた招集通知期限内(通常は開催日の2週間前まで)に発送。
  • 送付方法:書面(郵送)だけでなく、メールや法人ウェブサイトへの掲示も可(定款で認める場合)。
  • 記載内容:議題の要旨・資料・参考情報を分かりやすくまとめて添付。
  • 確認依頼:到達確認のため、開封確認メールや返信用ハガキを併用すると確実です。

これにより、社員が事前に内容を把握し、当日の審議がスムーズに進みます。

Q20:社員総会と理事会の違いは? 同日開催できますか?

A20:
  • 社員総会(評議員会):社員・評議員が集まり、定款変更・役員選任・剰余金処分など法人の重要事項を決議する最高意思決定機関です。
  • 理事会:理事が集まって、日常業務の執行や事業計画の承認などを行う機関です。

同日開催は可能ですが、定款で開催時期や招集手続き・議事録作成要件が別途定められている場合は、それぞれの要件を満たす必要があります。
また、議題が重複しないよう議案を整理し、出席者や議決権の扱いに注意しましょう。

Q21:総会に出席できない場合、どうしたらいいですか?

A21: 直接参加できないときは「委任状」を利用します。
委任状には代理人氏名・委任する議題・署名捺印を記載し、開催前に法人へ提出すれば、代理人があなたの代わりに議決権を行使できます。委任状の様式や提出期限は定款で定められているので、事前に確認しましょう。

Q22: 理事会に出席できない場合、どうしたらいいですか?

A22:理事会は原則として代理出席が認められていません。そのため、出席できない場合は次の方法で対応します。

  • 書面による意見陳述:会議前に各議案への意見を文書で議長や他の理事へ提出し、議事録に添付して記録。
  • 書面決議の活用:定款で定めていれば、書面または電磁的方法による決議制度を利用可能。
  • Web会議の導入:定款で許可があれば、オンラインで参加して出席とみなすことができます。

Q23: 総会の議決結果はいつ公表すればいいですか?

A23: 総会の議決結果は、原則として「総会終了後速やかに」公表・通知します。
具体的には:

  • 招集通知を受けた全員への通知:開催翌日から概ね2週間以内に書面または電磁的方法で結果を送付。
  • 議事録への記載・備置:議事録を作成し、総会開催日から10年間、本店または主たる事務所に保管。
  • 公益法人の場合:事業報告書や定時総会直後の官報・電子公告への掲載で公表要件を満たします。

あくまで「遅滞なく」告知・備置することがポイントです。

Q24: 会議中にトラブルが起きた場合の対処について知りたい

A24:
  1. 一時中断:まず議長が会議を一時中断し、事態を把握。
  2. 事実確認:関係者から状況を聴取し、トラブルの原因や影響範囲を確認。
  3. 定款・議事運営規程の参照:定款や議事運営規程に定める対応方法(再議論、警告、退席命令など)を適用。
  4. 参加者への周知:決定した対処方法を参加者に明示し、再開時のルールを共有。
  5. 議事録への記録:トラブル内容と対応措置を議事録に詳細に記載し、後日の検証資料とする。

これにより秩序を維持しつつ、適切かつ透明に議会運営を続行できます。

Q25: 議事録はどのように保管しますか?

A25: 議事録は本店または主たる事務所で保存し、紙または電子データのいずれも認められます。電子保存する場合は「電子帳簿保存法」の要件(タイムスタンプ付与、検索機能の確保など)を満たす必要があります。保存期間は法人法令に明示はありませんが、実務上は決算関係書類と同様に10年間が目安です。保存場所は関係者が迅速に閲覧・提出できる体制を整えましょう。

Q26:役員の任期は何年ですか?

A26:役員の任期は定款で定めますが、法律上の上限があります。一般的には以下のとおりです。

  • 一般社団法人・一般財団法人:理事2年以内、監事4年以内
  • 公益社団法人・公益財団法人:理事2年以内、監事4年以内
  • 会社法(株式会社の場合):取締役10年以内、監査役4年以内

たとえば定款で「理事の任期を1年」「監事の任期を3年」と定めることも可能ですが、上記の上限を超えることはできません。任期満了時には、総会(評議員会)で再任の可否を決議し、再任しない場合は退任登記を行います。任期途中での辞任や解任も手続きに従って対応できます。

Q27:役員が辞める場合はどんな手続きが必要ですか

A27:
  1. 辞任の意思表示
    役員本人が書面(辞任届や退任届)で辞任の意思を法人に提出します。口頭でも可能ですが、証拠を残すため書面化がおすすめです。
  2. 総会(評議員会)での承認
    定款に「退任承認」が必要と定めている場合は、総会または評議員会の議事録に辞任承認を記録します。
  3. 登記所への届出
    辞任後2週間以内に、所管の法務局へ「役員変更登記申請書」を提出し、退任登記を行います。
  4. 所轄庁への届出(公益法人の場合)
    公益社団・財団法人は、所轄庁へ「役員変更届出書」を提出し、辞任を報告します。

これらの手続きを経て、正式に役員の辞任が完了します。

Q28:新しく役員を選ぶ場合にはどんな手続きが必要ですか

A28:役員を補充するには、以下の手順を踏みます。

  1. 候補者の選定
    予め総会(評議員会)に提案する候補者を決めておきます。
  2. 総会での選任議案提出
    総会(一般社団法人)または評議員会(公益法人)で「役員選任議案」を提出し、定款で定められた決議要件(通常は出席者の過半数以上)で可決。
  3. 議事録の作成
    選任決議の内容を議事録に記録し、署名押印します。
  4. 登記申請
    決議後2週間以内に法務局へ「役員変更登記申請書」を提出し、新しい役員を登記。
  5. 所轄庁届出(公益法人のみ)
    公益社団・財団法人は、所轄庁へ「役員変更届出書」を提出して完了です。

Q29:役員を途中で辞めさせることはできますか?

A29:はい、できます。定款や会社法・一般社団法人法では、役員(理事・監事)は総会(評議員会)で「解任議案」を可決することで退任させることが認められています。
手順は以下の通りです。

  1. 解任議案の提出
    株主(社員)または評議員◎名以上の議決権ある者が、解任議案を提出。
  2. 招集通知
    定款に定める期間(通常2週間前)までに、総会招集通知で解任議案を明示。
  3. 総会での決議
    原則として出席者の過半数の賛成で可決(定款で特別決議要件を設ける場合もあり)。
  4. 登記手続き
    解任後2週間以内に法務局へ「役員変更登記」を申請。

この流れで、任期途中でも適法に役員を辞めさせることができます。

Q30: 役員の資格や欠格事由について知りたい

A30:資格:成年に達し、後見開始等の制限行為能力者でないこと。定款で追加要件(住所要件など)が定められる場合もあります。

欠格事由(会社法・一般社団法人法など)には主に以下が含まれます:

  1. 破産者で復権を得ない者
  2. 禁錮以上の刑に処せられ、その執行後5年を経過していない者
  3. 法人の破産手続開始決定を受け、復権を得ない者
  4. 公益法人では、麻薬犯罪など政令で定める追加欠格事由あり

これらに該当すると、法的に役員に就任できません。

Q31:事業年度とは?

A31:事業年度は、法人が会計処理や事業報告の対象となる「1年間」の区切りを指します。
例えば4月1日から翌年3月31日まで、1月1日から12月31日まで、など定款で定めておく必要があります。各事業年度の終了後には、決算書の作成・監査・総会承認・所轄庁への報告を行い、次の年度に進みます。

Q32:会計監査人(監査役)の役目は?

A32:会計監査人(監査役)は法人の会計運営が適正かを専門的にチェックする役割を担います。主な職務は以下のとおりです。

  • 決算書類の監査:貸借対照表や損益計算書などが会計基準に準拠しているか確認
  • 監査報告書の作成:監査の結果を取りまとめ、意見を報告書に記載
  • 内部統制の評価:会計に関わる業務プロセスや帳簿管理の仕組みが適切か検証
  • 帳簿・証憑の検査:収益事業と公益目的事業の帳簿を分離管理し、証拠書類を点検

公認会計士や監査法人が就任し、公益法人では監査報告書を所轄庁へ提出する義務があります。
これにより、第三者による客観的な会計監査が実現し、ガバナンス強化につながります。

Q33: 会計年度の途中で事業年度を変えられますか?

A33:はい、変更できますがいくつか手続きが必要です。

  1. 変更議案の可決
    定款に事業年度を定めている場合は、社員総会(評議員会)で「事業年度変更議案」を可決します。
  2. 短期事業年度の設定
    会計年度の途中から変更する場合、変更前と変更後の間に「短期事業年度」(例えば○月△日~×月◇日)を設け、1年に満たない期間の決算も行います。
  3. 所轄庁への届出・承認
    公益法人は所轄庁の承認が必要、一般法人も都道府県・内閣府への届出を行います。
  4. 登記申請
    変更後2週間以内に法務局へ定款変更・事業年度登記を申請して完了です。

これらのステップで、会計年度途中でも新しい事業年度に移行できます。

Q34: 毎年の報告書は何を提出すればいいのですか?

A34: 毎事業年度終了後、以下の書類を所轄庁へ提出します。

  1. 事業報告書:1年間の活動内容をまとめた報告。
  2. 計算書類:貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書など、財務状況を示す書類。
  3. 附属明細書:計算書類の内訳や注記を記載。
  4. 監査報告書:監事または会計監査人による監査結果の報告。

公益法人の場合はこれらを事業年度終了後3か月以内、一般法人は2週間以内に所轄庁へ提出し、官報やホームページなどで公告も行います。

Q35: 公告とは何ですか? どうすれば公告したことになりますか?

A35: 公告とは、法人の重要情報を広く一般に知らせる手続きです。
たとえば決算概要や役員変更などを公告媒体で公表します。
公告方法は定款で定め、主に以下の方法があります。

  1. 官報公告:官報に掲載。法的効力が強く、公益法人は必須。
  2. 電子公告:自社ウェブサイトや専用電子公告サイトで公開。一般法人で認められる方法。
  3. 新聞公告:定款で定める場合に限り、指定新聞に掲載。

公告したことになるのは、定款に定めた媒体に、定款で決めた期間(例:掲載から2週間)掲載された時点です。掲載証明(掲載紙の写しや画面キャプチャなど)を保管し、必要に応じて所轄庁や利害関係者に提出できるようにします。

Q36: 監事と会計監査人はどう違いますか?

A36:監事:法人全体の業務および会計をチェックします。業務の適法性や定款・法令遵守状況を監督し、不正や不備がないか点検。理事会の運営状況も含め広く監査します。

会計監査人:会計面に特化して監査します。決算書や帳簿が会計基準に合っているか、内部統制が適切かを専門的に査定し、監査報告書を作成します。

公益法人では、監事と会計監査人が併任される場合もありますが、いずれも第三者的立場でガバナンス強化を支える重要な役割です。

Q37:法人の住所変更の手続きをしたい

A37: 法人の本店所在地を変更するには、以下の手順を踏みます。

  • 定款確認・変更議案の作成
    定款に「本店所在地」を明記している場合は、定款変更議案を総会(評議員会)で可決できるよう、変更後の住所を記載した議案を準備します。
  • 総会での決議
    定款変更を伴う場合は、社員総会(一般法人)または評議員会(公益法人)で定款変更議案を特別決議(通常は出席者の3分の2以上の賛成)で可決します。
  • 法務局への登記申請
    決議後、2週間以内に管轄法務局へ「本店移転登記申請書」を提出します。必要書類として、定款の変更後全文、議事録(定款変更決議)、印鑑届出書などを添付します。
  • 所轄庁への届出(公益法人の場合)
    公益社団・財団法人は、所轄庁へ変更届出書を提出し、定款変更の認定を受ける必要があります。

以上の流れで、正式に住所変更が完了します。もし定款に住所を定めていない場合は、総会決議のみで登記申請できます。

Q38: 社員(評議員)を増やしたい

A38: 社員(評議員)を増やすには、まず定款に「社員(評議員)の員数上限・下限」が定められているか確認します。下限を超えていれば、以下の手順で増員できます。

  1. 増員議案の作成
    変更後の員数を明記した「社員(評議員)増員議案」を準備。
  2. 総会(評議員会)で承認
    定款で定められた決議要件(通常は出席者の3分の2以上)で可決。
  3. 名簿の更新
    新たに選任した社員(評議員)の氏名・住所等を名簿に登録。
  4. 所轄庁への届出(公益法人の場合)
    公益社団・財団法人は、増員後2週間以内に所轄庁へ「役員・評議員変更届」を提出。

以上で正式に増員手続きが完了します。定款上の上限がある場合は、定款変更が先に必要です。

Q39: 監事に報酬を支払いたい

A39: 監事にも報酬を支払うことが可能ですが、以下の手続きが必要です。

  1. 定款への規定
    定款に「監事に報酬を支払う旨」または「報酬規程」を記載します。
  2. 総会(評議員会)決議
    定款の根拠に基づき、総会または評議員会で監事報酬の額と支給方法を可決します。
  3. 公益法人の場合の認定・届出
    公益社団・公益財団法人では、所轄庁に報酬規程の認定申請または届出が必要になることがあります。
  4. 税務上の手続き
    支払額に応じて源泉徴収や社会保険等の手続きを適切に行います。

以上を満たせば、監事に対しても適法に報酬を支給できます。

Q40: 収支報告書とはどんなものですか? どのように作成しますか?

A40:収支報告書は、1年間に入ってきたお金(収入)と出ていったお金(支出)をまとめた書類です。
例えば寄付金や事業収益がいくらか、事務費や人件費にいくら使ったかを一覧にします。
作成手順は以下のとおりです。

  1. 帳簿の確認:収入・支出を記録した帳簿や領収書・請求書を集める。
  2. 科目ごとに集計:収入科目(寄付金、会費、収益事業収入など)、支出科目(人件費、事務費、事業費など)に分けて合計を算出。
  3. 報告書フォーマットへ転記:所轄庁の様式や自社フォーマットに、科目別の収入・支出額と合計を記入。
  4. 監査・承認:監事や会計監査人のチェックを受け、総会(評議員会)で承認を得る。

これで、法人の「お金の流れ」が誰にでも分かる形で報告できます。

清算に関するQ&A

Q41: 公益法人が解散した場合、残余財産はどのように処分されますか?

A41: 公益法人が解散した場合、残余財産は、定款で定められた他の公益法人や国、地方公共団体に帰属することになります。
これは、法人が解散しても、その財産が設立者の個人的な利益になることを防ぎ、公益性を維持するための重要な規定です。定款に残余財産の帰属先が定められていない場合は、国庫に帰属します。

Q42: 公益法人の解散手続きは、どのように進められますか?

A42: 解散は、理事会の決議(定款に別段の定めがある場合は社員総会や評議員会の決議)を経て、行政庁への届出や登記が必要となります。
その後、清算人が選任され、債権者保護手続き(公告、催告)を経て、残余財産の処分、清算結了の登記、行政庁への届出といった流れで進められます。

紛争に関するQ&A

Q43: 公益法人の役員が、任務を怠った場合、どのような責任を負いますか?

A43: 理事、監事、評議員などの役員は、公益法人に対して善良な管理者の注意義務(善管注意義務)を負っています。任務を怠り、法人に損害を与えた場合は、法人に対して損害賠償責任を負うことがあります。
また、悪意や重大な過失によって第三者に損害を与えた場合は、第三者に対しても損害賠償責任を負うことがあります。

Q44: 役員の損害賠償責任を免除・減免できる制度はありますか?

A44: 公益法人の役員(理事・監事等)は、善管注意義務・忠実義務違反があると損害賠償責任を負います。
ただし、一般法人法には責任軽減制度があり、定款の定めや理事会決議により賠償額の一部免除が可能です(一般法人法114条、115条)。
また、非業務執行理事等については「責任限定契約」を締結でき、一定範囲で損害賠償額の上限を事前に定めることが認められています(同法115条)。
さらに、役員等に損害賠償保険を付保し、法人が費用を負担することも許容されています(同法118条の3)。これらの制度を適切に活用することで、公益法人の役員負担を軽減し、優秀な人材確保にも資することが期待されます。

Q45: 公益法人が認定基準に違反した場合、どのような行政処分がなされる可能性がありますか?

A45: 公益認定の基準に違反した場合、行政庁から以下の段階的な処分を受ける可能性があります。

  • 指導・助言:軽微な違反の場合。
  • 勧告:改善が必要な場合。
  • 命令:勧告に従わない場合や、より重大な違反の場合。
  • 公益認定の取消し:命令に従わない場合や、著しく公益性を欠くと判断された場合、公益認定が取り消されます。公益認定が取り消されると、その法人は一般法人に戻り、過去に遡って課税されるなどの不利益を被る可能性があります。

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